かつて出演した演奏会で、
ピアノを弾く10歳の少年と共演した。
公演後、
池田さんに手を握られた少年は「誰?」と尋ねた。
少年は目が不自由だった。
「さっき歌を歌ったおばちゃんよ」
との返答に、少年は言った。
「ああ、すごくきれいな声で、素晴しい歌だった」。
池田さんは、歌声に込めた音楽への純粋な心が、
少年の心に響いた喜びを、自著『あきらめない人生』
(海竜社)につづっている。
“少年”とは、今や世界で活躍する辻井伸行さんだ。
ある青年の父が病に倒れた。
信心強盛な両親に対し、青年は学会活動に消極的だった。
地域の同志は連日、家族の激励に訪れ、
“君のお父さんにどれほど励されてきたことか”
と感謝の言葉を口にした。
青年は“最も父に励されてきたのは自分だ”
と痛感し、その回復を必死に祈った。
後日、退院した父が言った。
「お前の題目が、しっかり心に届いたよ。ありがとうな」。
今、親子で信心に励む。
てらいのない、本心からの言葉に勝る力はない。
場の空気を読んだり、表現を選ぶのも大事だが、もっと大切なのは、
ありのままに受け入れ、素直に気持ちを表せるよう心を磨くことだ。
われらの仏道修行も、そのためにある。(城)