ある陶芸家が語っていた。
「完璧なものは奇麗です。
でも魅力とは別」と。
例えば機械で作った完璧な瀬戸物の器より、
ろくろを回して焼き上げた手作りの器に、人は味わいを感じる。
「作品に魂が宿ると、色や形のずれさえ魅力に変わるのです」。
事業の挫折から再起した壮年部員が、
「このおかげで負けなかった」と、紙の束を見せてくれた。
それは地域の先輩が、
留守がちだった壮年の家に通い続け書き置きした“励ましのメモ”。
一枚一枚拝見し、こちらまで胸が熱くなった。
先輩は、筆を持つのが苦手だったのだろう。
たどたどしい文には、誤字や脱字もあった。
だが、壮年を思う気持ちは、痛いほど伝わってきた。
記者がまだ駆け出しだった頃、先輩に教わった。
「思いだけで、良い記事が書けるとは限らない。
でも思いがなければ、良い記事は絶対に書けない」と。
文章も対話も同じだと思う。
いくら体裁が整っていても、
“借り物”や“背伸び”の言葉は、人の心に響かない。
うまくなくてもいい。
大切なのは、自分の思いを、
自分の言葉で、誠実に伝えることだ。
御聖訓「言と云うは心の思いを響かして声を顕すを云うなり」
(御書563ページ)を深く、深く拝したい。
祈りと真心を込めた時、言葉の力は何倍にも増す。(誠)