幕末から明治の大名人といわれた講釈師の神田伯山は、
「伯山は天一坊で蔵を建て」
と川柳に詠まれるほどで、80人以上の弟子がいたという。
ある日、外出した伯山が、お供の末弟子に言った。
「おい、そばを食おう」。
ところが店に入って注文したのは、自分のそば1杯。
不審げな弟子に、伯山が一言。
「食いたかったら芸を勉強しなよ」。
弟子は家に帰るなり、父に不満をぶつけた。
すると父は、師匠の家に向かって両手をつき、感謝を。
そして
“今は一番下だが早く一人前になれ”という励ましなのだ、と。
心を入れかえ稽古に励んだ弟子は後年、
先輩たちを追い越し、2代目・神田伯山となった。
師の言動を恨んだままでいたら、
後の大成はなかったかもしれない。
それが父によって師の深い思いに気付かされ、
弟子の心は変わった。
出来事そのものは変わらなくても、
「捉え方」が変わったことで、未来が開けたのである。
人生には、さまざまな出来事がある。
その一つ一つを、どう深く捉えられるか。
心が変われば、世界が変わる。
全てを前進と成長の好機と捉えていく。
“たくましき楽観主義”
こそ、信仰者の証しである。(誼)