映画「海賊とよばれた男」が好評だ。
主人公のモデルは、出光興産の創業者・出光佐三氏。
「人間尊重」という経営哲学も注目を集めている。
石油を扱うことが禁じられた戦後、
氏が最初に本格的に手掛けた仕事は、畑違いのラジオの修理。
「世間からはいわゆる『ラジオ屋』
として見られる」と、本業ができないもどかしさを吐露している。
だが同時に「これだけでも良い修業」と前向きに捉えた。
そして、生活必需品の修繕は「新日本建設に偉大なる貢献をなす」
と心に決めた(『人間尊重五十年』春秋社)
北海道伊達市に、
経営する料理店を不景気で手放した上、がんで胃を全摘したブロック長がいる。
苦難のどん底で、彼は母を思った。
夫を亡くした後、ミシン売りや布団綿の打ち直し、
リヤカーでの廃品回収をし、女手一つで育ててくれた。
「どんなにつらかろうが、逃げちゃだめだぁ」
「今いる場所が使命の天地だがらなぁ」。昔、母に言われた言葉を胸に、彼は奮起した。
立て直した店は繁盛し、調理師会や飲食店組合の役員も務めた。
その功績に厚生労働大臣賞も贈られた。
見えや気取りを捨てた人は、思いもしない力が出る。
どんな仕事も、場所も、
「これこそわが使命」と決めることから、偉業への道は開かれ始める。(鉄)