人影のない山村で遅咲きの桜を見た。
日差しの少ない痩せ地によくぞ咲いたものだと近づくと、
たくさんのハチが花の蜜を吸っていた。
生育条件が悪かろうとも、
誰が見ずとも凜と咲き、命を育む桜には風格があった。
かつて暑い時期の本紙に、池田先生のこんな詩が掲載された。
「春だ 桜だ 人生だ」。
横には、
桜は夏から翌年の開花の準備を始めるという趣旨の文章が添えられていた。
花の見頃は短い。
だが、その晴れ姿は春夏秋冬、いな、
大地に根を下ろしてからの間、厳しい自然環境と戦い、勝った証しともいえよう。
この黄金週間、各地のイベントに音楽隊の雄姿があった。
マーチングバンドの大会で演奏する時間は、わずか8分間。
しかし、そのショーの完成までに年間を通して懸命な練習を積み重ねる。
メンバーは現実社会での悩みや課題と格闘しながら、
学業や仕事、学会活動に取り組んでいる。
苦労を誉れとする志は、音楽隊結成以来の伝統だ。
その彼らの生み出す音楽だからこそ、聞く人の胸に響くのだろう。
風雨に打たれず成長した樹木はない。
不遇な環境にも倒れず、必死に生き、
爛漫と花を咲かせる桜が、広布楽雄の姿と重なる。
きょう5月9日は「音楽隊の日」。(城)