いじめに遭い、生きる希望を失っていた中学生。
“夜回り先生”
こと水谷修さんに、たった一言、メールを送った。
「死にたい」と
水谷さんの返信も一言だった。
「あなたは誰かのために何かをしたことがありますか?」
中学生は驚き、自問を重ねる。
そして、人のために何もしたことがないと気が付き、思い直した。
時がたった今、
介護職に就き、誰かのために生きる喜びをかみ締めている。
生命の十界は一面、
“人間の底力を発揮できる生き方の順番”という捉え方もできる。
確かに、地獄界、餓鬼界、畜生界では前進の力は弱い。
悟りが自身だけにとどまる声聞界、
縁覚界でも、行き詰まりを感じることが多い。
だが誰かのために行動する菩薩的生き方をしたとき、
自身も不思議と想像以上の力が出るものだ。
文豪トルストイは
「われわれは他人のために生きたとき、はじめて真に自分のために生きるのである」
(北御門二郎訳『文読む月日』筑摩書房)と。
友のために行動する中で自身の宿命転換を果たしていく。
学会活動の意義もここにある。
トルストイは先述の言葉に続けた。
一見不思議に思われるけれど、
実践してさえみれば、本当だということがわかるだろう。