自己肯定感は必ず上がる...

自己肯定感は必ず上がる...

 ――若者には、自分はダメだと思ってしまう人が多いようです。

 人は通常、生まれてからの幼少期が、最も自己肯定感が高いと考えられます。そこから思春期に向かって、だんだん下降していく。しかしこれは、体の変化、性への意識、考える力がつくことなど、子どもが成長していく中で当然のことです。
 
 20代からは、自己肯定感は高まる傾向にあります。そして、60代で思春期以降のピークを迎えます。
 人はさまざまな人生経験を通して、煩わしいことを忘れたり、自分の中で上手に消化できるようになるのです。


子どもの笑顔は最高の宝物(6月、札幌市内で)
“原因探し”は意味がない

 ――子どもの不登校で悩んでいる人も多くいます。
  
 私は大学教員になる前の20年間、高校で教員をしていました。やはり当時から、今ほどではないですが、不登校の生徒は多かった。

 ここで問題なのが、「なぜ学校に行かないのか」と、子どもを問い詰めてしまうことです。前提として、不登校の“原因探し”はあまり意味がない。不登校は表面に現れた現象であって、本質は別にあります。だからこそ「これからどうすべきか」に思いを巡らし、“未来”を向いて、子どもと関わってほしいのです。

 その上でまずは、閉じてしまっている子どもの心を開いてあげることです。大人は善かれと思って、いろいろなアドバイスをしますが、子どもがそれを受け入れる状況になっていなければ意味がありません。
 では、どうやって開くのか。それは「聞くこと」です。子どもの声に、じっくりと耳を傾けてください。聞くことで心が開いていきます。

 子どもの心が少し開いてきたら、親は自分の過去の失敗や経験を子どもに話すのもいいでしょう。自己開示と言います。自らも心を開いて、わが子の心に寄り添うのです。

 
人生を見つめ直す「チャンス」

 ――子どもが自己肯定感を高めたり、困難を克服するためには、家族の存在が重要なんですね。
  
 家族の中で何でも話せる雰囲気をつくっていけば、子どもにとって家族が自分の「居場所」になります。そして、何かあった時に家族で団結できれば、どんな問題も必ず乗り越えられます。
 先ほど「獲得体験」の話をしましたが、不登校もそうです。子どもの課題や問題が現れた時は、人生を見つめ直す絶好のチャンスと捉えてください。

 今、お話ししたことは幅広く活用できます。子どもだけではなく、大人にとっても大切なことです。課題にどう向き合い、どう乗り越えていくか。それによって、人生の充実感が大きく変わっていくのです。

【プロフィル】おおとも・ひでと 1955年生まれ。高校教諭を経て、東北・北海道の大学で教壇に。NPO日本教育カウンセラー協会副会長、北海道いじめ・不登校等対策本部プロジェクトチーム委員などで活躍。著書多数。