84歳の壮年は小学生から中学生の時まで...

84歳の青年は小学生から中学生の時まで...父親の病のため...叔父のもとで暮らした...叔父は住職...壮年は毎朝午前5時に起床し...雑巾がけを手伝った...冬場も続け...手はあかぎれだらけになった...血がにじむ彼の手に...小学校の先生が気付いた...先生は職員室で...その手を優しく握って温めた...両親と離れて生活する寂しさから...彼の心はすさみかけていた...あれから随分と時がたつけれど...あの手のぬくもりは今も忘れることができない...と...青年は感慨深く振り返った...先生は北海道の教員時代...あかぎれの子の手をお湯で洗ってあげたり...雪道を帰宅する児童を背負ったりすることもあった...当時...同じ小学校で教育実習を受けたある人は...先生の姿を通して...私は真の人間教育ともいうべきものを教わった...と述べている...毎朝...児童が喜んで学校に登校するかどうかは...教師の...慈顔と朋輩の熱情による...これが...先生の信念だった...先の教育実習生をはじめ...先生に関する幾つかの証言が残っている...そこから浮かぶのは...一人一人の児童に慈顔を向け...朋輩に熱情を注ぐ...先生の姿だ...