現在における教育の目的は...
果たして確立していると考えられるのか...
また...確立しているとすれば...
その目的は万人が等しく賛成し...
承認するものであるのかどうか...
それは...数々の疑問が残されているところであり...
実に日本の教育界の重大事である...
目的が確立していなければ...
方法の設定が不可能であることは...
目的なしに射た矢が的に命中するとは...
考えられないことから察することができよう...
ある論者は(教育の目的は)国家のためと言い...
また...ある人は父母のためと...言う...
しかし...それは果たして子どもを愛する父母の...
純真で率直な希望なのであろうか...
真に子どもを愛する父母であるならば...
決して子どもを自分たちの...
幸福の手段とは考えないだろう...
(江戸時代の町奉行の)
大岡忠相による裁きで...
実母と養母が...一人の子どもの...
取り合いをした話はその好例である...
一方は...
子どもを奪うことが第一義で...
子どもの生命を顧みなかったのに対し...
他方は...
子どもの生存を第一義に...
考えて取り戻すのは第二義だった...
教育を受ける子どもたちに社会がとるべき態度は...
まさに...父母がこのように子どもに...
対したのと同じ関係であるべきだ...
一方の利益だけを重視して...
子どもたちをそのための手段とみなすことは...
結局のところ...
(社会と子どもたちの)
双方を共に破滅の淵に追いやることになる...
教育を受ける子どもたちが...
幸福な生活を遂げられるように(生き方を)...
教え導くのが教育である...
教育者や教育を望む父兄などが...
自分の生活面での欲望を満たすために...
子どもたちを手段とするのではなく...
子どもたち自身の生活(に関わるもの)を...
教育活動の対象としながら...
子どもたちの幸福を図ることをもって...
教育の目的とするのである...言い換えれば...
子どもたちの成長と発展が...
幸福な生活の中で終始できるように...
するものであらねばならない...
(哲学者の)ジョン・デューイ氏が...
(教育のあり方に関して)生活のために...
生活において...生活によって...と言ったのは...
教育者である我々にとって味わうべき言葉である...