力強く鍵盤をたたくと、
脳から“やったるで効果”が出て、頭が良くなる。
そんな理由で母にピアノを習わされた、
とジャズシンガーの綾戸智恵さんが、かつて、ラジオ番組で自身の少女時代を語っていた。
綾戸さんのお母さんの説が、医学的に正しいかは分からない。
ただ、ある楽曲のフレーズを聴くと、気持ちのスイッチが入ることがある。
そう言われると、うなずく人も多いのではないか。
先日、音楽隊の「しなの合唱団」が宮城を訪れ、
復興支援の「希望の絆」コンサートを県内各地で行った。
〽母よ、と歌声が響くや、
会場のあちこちで目頭を押さえる人の姿があった。
愛し育んでくれた母。
わが地域の広布の母。
震災以来、涙を封印し、気丈に家族を守ってきた母である自分自身……
皆がそれぞれの“母”を思い浮かべていたのだろう。
そして、合唱団が歌い終わった瞬間、聴衆は、りりしい顔で喝采を送っていた。
皆の心の“やったるでスイッチ”が入ったのだろう。
池田先生は「『今』『ここで』『直ちに』人間の生命を励ますことができる。
これが音楽の妙なる力」と。
音楽の力は偉大だ。
そして、その力を心いっぱいに受け止めて、
立ち上がる人間も、また偉大になれる。(城)